作品のコメント

「まなざしの本質」をテーマに、その視線が見るものを投影しながら、視覚として見えているもの以外に見ているもの、または在るもの、空気感や心象風景を「ものの見方」にこめて表現することを試みています。
数年前までは投影物をわかりやすい風景やランドマークで描くことが多かったですが、最近ではどこか特定できない風景を切り取って描くように方向性が向いています。

また投影物のない「まなざし」を表す作品もあります。
近年は、まなざしを追求していった結果、陰と陽の両方が映り込むことが多くなり、それは視覚上の光と陰の関係でもありますが、光があるから陰が存在し、陰は光なくしては陰となり得ない、いわゆる光と陰は常に表裏一体であり、共存しているのであって、それはまなざしも心理も同様であるととらえだしたことから、同じモチーフで対となる作品を描くこともよくあります。



制作背景

もともと直接的で感情があふれでる表現方法には居心地の悪さを感じ、クールでソフトな表現方法を好むため、ペインティングやドローイングの直接技法よりも、間にカメラやプレス機などの機械をはさんでイメージを客観化させられる、間接技法である版画や写真を好む傾向がありました。
写真を撮った後、それを手で描きおこし版画にするという二重間接技法でイメージを完全にクールダウンさせ、版種はリトグラフやシルクスクリーンに勤しんでいます。

版画技法を発展させることも好きで、新しい画法や刷りの効果を積極的に試します。
その結果得られたものが頭の中にあったものと変わって生まれることもあり、自らの想像通りで終わらないところが版画の好きな部分かもしれません。
モチーフは、普段から旅行に行ったり写真を撮るのが好きで、アーカイブを豊富に持っています。
あるときその中から、イメージが脳内で浮かび上がり、制作のアイデアが出来上がります。
ですから自分でも次にどのイメージが作品になるのかは前もってわかっている訳ではありません。